かなり遅れて練習に参加したので監督には絶対怒鳴られると覚悟してたけど、私の真っ赤な目を見てか、どやされることはなかった。

私の様子がおかしいことにはチームメイト達もきっと気付いていたけれど、誰一人それに触れてくる人はいなくて、そのことに心底感謝した。




家に帰って制服もそのままに、クローゼットの奥に溜め込んだ陸上雑誌を引っ張り出す。

あ、これ小田浩平選手の特集が載ってるやつだ。こっちは市橋玲奈選手。

お。これは高校に進学する前の、高校陸上の特集が組まれている号。懐かしいけど、これじゃなくて……。


「……あった!」


見つけた。私が中学2年生の時に買った、中学陸上の特集記事が掲載されている雑誌。

床に座り込んで、必死にページをめくる。

目当てのページは、初めのほうにあったのですぐに見つかった。


「“100mのホープ・和泉崚太”……」


そんな見出しで掲載されているのは、つい数時間前に初対面を果たした想い人だ。