「こりゃ、聞いてた以上に重症だな」雨音の隙間で、康介が静かにこぼす。


「ちづ、こっち向け」

「何……って、いった!」


言われて振り向いたら、鈍い痛みが額に響いた。

思わず叫んでしまった今の状況を、瞬時に理解することが出来ない。

目の前に掲げられた大きな手。少ししてから、この手がデコピンを炸裂させたのだと理解する。


「なっ、何すんの……!」

「お前が情けないことばっか言ってっからだ」


憤慨する私を気に留める様子もなく、康介がしれっと言い放った。


「“けど”とか“かもしれない”とか、後ろ向きなことばっか言いやがって」

「……っ」

「しっかりしろよ。クヨクヨすんな。俺が好きだったのは、そんなお前じゃねぇ」


康介は怒っても泣いてもいない。

ただ真っ直ぐな目で、私を見据えていた。