ひとり頭の中でああだこうだと考えを巡らせる私を、康介がおかしそうに笑う。


「ま、とりあえず帰ろうぜ」


相変わらずちょっと意地悪な、優しい笑みを向けられ、身動ぎしてしまう。

康介と帰路につくのは、あの日以来だ。




ほとんど電気の消えた少し不気味な校舎を後にして、雨の降る街を歩き出す。

傘の花を咲かせた分開くスペースが、今の私達の距離を表しているようでちょっぴり寂しかった。


「手紙、来ないんだって?」


少しして、康介が口火を切った。

康介の知るところではない話題だったのでぎょっと目を剥いて視線を投げると、彼はちょっと言いづらそうに真田の名前を挙げた。

あぁなるほど、この2人は繋がってたんだった。……私の重要な出来事においてのみ。

私を心配してのことだって知ってるから、咎めることは出来ない。


「……そうなの。康介と話をした後、すぐに手紙を書いて靴箱に入れたんだけど……返事、来なくて」

「書いた手紙は靴箱からなくなったのか?」

「うん。だから、受け取ってはくれてると思うんだけど」