「雨って嫌になるよね。アホ毛のオンパレードだし、意味もなく鬱々としちゃうし」

「あはは、わかる」


どんよりとした雲に覆われて、薄暗くなった世界はなんだかちょっぴり息苦しい。

閉鎖された空間に閉じ込められた気がして、どこへも行けなくなってしまいそう。


「そういや私、決めたよ」


息を整えてから、美羽が私に向き直った。

口調の割にその視線は真剣で、思わず私も背筋を伸ばす。


「陸上は高校で終わりにする」


突然の宣告に、言葉を失う。

今、なんて……?


「やっだ千鶴、そんな顔しないでよ」

「いたっ」


よほど間抜けな顔をしていたらしい私の背中を、美羽がケラケラと笑って叩いた。かなり強く。痛い。


「だって、びっくりして……」

「そんな驚くことないでしょ! 高校で競技生活に見切りつける子なんて沢山いるよ」

「それは……そうなんだけど」


でも美羽は辞めないと思ってた。漠然と、何の確証もなかったけれど。