シルエットすらぼやけてうまく見えない。ただそこにいるということだけを私に教えて、それ以外は何も明かしてくれない。


『…………』

『…………』


その人は私をじっと見据えたまま、動くことも何かを発することもなく。

フィールドとスタンド、私達は一定の距離を保ったまま微動だにしなかった。そんな不思議な夢だった。




気が付いたら、季節は梅雨に差し掛かっていた。

連日の雨のせいでグランドは使えず、屋内の練習が主になりつつある。


「全然止む気配ないねぇ」


階段ダッシュを終えたばかりの美羽が、肩で息をしながら外を眺めていた私に声を掛けた。

窓を打ち付ける強い雨を眺めながら小さく頷く。