意識の外で、本を胸に引き寄せた。


リョータ。君はこの本を、どんな気持ちで読んだ?

読んだ背景には、どんな出来事があった?

悔しいけど、私にはいくら考えてもわかんないよ。


好きって気持ちを自覚して、これからもっと君のことを知っていきたいと思っていたのに。

恋ってのはやっぱり。


「苦しいものなんだなー……」


前髪をくしゃっと掻き上げて呟いた溜め息混じりの声は、虚無感と混じり合って弱々しく消えていった。




久しぶりに、あの日の夢を見た。

中学最後の舞台。太陽の光を浴びて、眩しいくらいに輝いていたあの景色。

ゴールラインを越えた先のスタンドに、一つの人影が見える。


誰……?

じっと目を凝らしてみても、逆光でその姿を確認することができない。