険のある言い方しか出来ない私に取り合わず、真田は私の頭をぽんぽんと優しく叩く。

自分の幼稚さを突き付けられたその行為が私を宥めるためだとわかる分、痛かった。




以前は教科書しか収納されていなかった自室の本棚は、いつの間にか小説で埋め尽くされていた。

彼が私に勧めてくれたもの。私が彼に勧めたもの。

どの本にも思い出があって、内容を思い浮かべると愛おしさすら込み上げる。


「…………」


一番左端に並んでいるハードカバーの本を人差し指で抜き出す。

中でも特別な一冊。リョータが一番初めに勧めてくれた、有原ヒロコさんの“風になれ”だ。


爽やかな印象を抱かせる、青と緑が混ざり合った表紙に指を滑らせた。少しざらついた紙質で、初めて手に取った頃の気持ちを思い出す。


「あの頃は、こんなにハマるなんて思ってなかったなぁ……」


読書にも、……リョータとの文通にも。