ぐるぐる、グルグル。まるで終わりのない迷路を彷徨っているみたいだ。

こんな気持ちのまま土を蹴ったって、思うようなタイムを叩き出すことができないのは目に見えている。


「……走れないよ」


顔のすぐ傍で、真っ白なシーツをぎゅうっと掴む。

顔を枕に埋めたためにくぐもった声が、静かな部屋にぽつりとこぼれた。




「千鶴ー! 起きなくていいのー!?」


怒鳴り声にも近い母の叫び声に、私の意識は一気に現実世界に引き戻される。

状況を理解すべく、気怠い体を起こして視線を泳がせると、昨晩そのまま眠ってしまったのだと、ようやく理解した。

いつもはけたたましく鳴っている、昨クールのドラマの主題歌が聞こえなかったのは、アラームをかける前に夢の世界に旅立ったからだ。


ウッド調の掛け時計の針は、いつもならとっくに家を出ている時刻を指している。