こんな時でも私は甘えてばっかりで、こんなにも想ってくれている康介に何一つ返すことが出来ない。


「こうす……っごめ……ごめんね……私……っ」

「あーもう、泣くなよ。謝んなくていいんだって」


ごめんの三文字を繰り返し並べる私を、康介が困ったような声色で宥める。


「幼なじみとしてしか見れないっつー理由なら、すっげぇ凹むけどさ。違うだろ? お前はちゃんと、男として俺を見てくれたんだろ?」


康介の腕の中で何度も頷いた。そんな私を抱き締める腕に、そっと力が込められる。


「だったら俺も救われるんだ。ちゃんと土俵の上に立てたんだから」


まぁ、それでも大分凹むけどな。といつもの口調で付け足される。それは、隠さずに伝えられた彼の本音だった。


「申し訳ねーけど、すぐに今まで通り……ってのは無理だと思う」

「……っ」


リョータを選べば、康介を失うかもしれない。そんな危惧が、現実になろうとしている。

そのことに怯えたのが伝わったのか、康介が私の頭をあやすように撫でた。