「ちづ、ストップ」


呼び止められ、立ち止まった康介に釣られるように振り返る。

彼はその右手を持ち上げて、ある方向を指していた。


「そこで話そう」


骨太な指がさす先にあったのは、昔2人で足繫く通った児童公園。

フェンスもないような砂場と2つのブランコ、それから小さな滑り台があるだけの公園だけど、小学校低学年までは絶好の遊び場だった。


すっかり日の暮れたその場所に人の姿はなく、康介は私の返事を待つことなく公園に足を向けた。ハッとして、慌ててその後に続く。

ブランコの前に設置された接触防止のための鉄に康介が腰掛けたため、私が見上げられる形になった。


「こう……」

「ゆっくりでいい。お前の言葉が出てくるの、ちゃんと待つから」


私の言葉を遮った康介は、今までにないくらい穏やかな目と声色で言った。

あまりに優しい視線に、鼻のてっぺんがツンとする。


「言いたいことがありすぎて……何から話せばいいのか、自分でもわかんないんだけど」

「ん」