「…………」

「…………」


一緒に帰ろうと言った手前、私が切り出すのが道理だってことはわかってた。

だけど頭の中で必死に言葉を探してもすんなりと声になる文言を見つけることが出来なくて、ようやく声帯を震わせることが出来たのは私達が住むマンションの最寄り駅を出てからだった。


「この前の、ことだけど」


マンションへと続く人気のない住宅街の道に、私の声が静かに落ちる。

ポケットに手を突っ込んだ康介が、前を向いたまま視線だけをこちらに向けた気配がした。


何をどう話すことが最善なのか、昨日の夜に考えた。考えても考えても何が一番いいのかなんて全然わかんなくて、自分の思うままを伝えると決めた。

そのつもりで精一杯の勇気を振り絞って切り出したのに、やっぱり言葉は喉の奥に引っかかって中々出てこようとしない。そんな弱虫な自分が心底嫌になる。


「その……」


舌先で言葉を転がす私を見かねてか、康介がフッと短く息を吐いた。