言い残して、南山が帰っていく。

彼の言った通り、1分と経たないうちに康介はやってきた。

門の傍らに佇む私を認識し、康介が大きく目を見開く。


「お疲れ」


体の重心を自分に戻し、康介に向き直る。

彼はちょっとびっくりしたような顔をして、それから私と同じ言葉を繰り返した。


「もう帰る?」

「え? あぁ、うん」

「じゃあ、久しぶりに一緒に帰らない?」


無意識のうちに表情筋は機能を停止していて、何気なく言ったつもりが恐らく神妙な面持ちになってしまっていた。

康介も何かを悟ったらしく、言葉を詰まらせたような反応を見せてから静かに顎を引く。


街灯に照らされるアスファルトを、康介と肩を並べて歩き始める。

以前は当たり前だった、しかし今は少しの懐かしさを覚えてしまっていることが妙に切ない。

たった2週間やそこらしか経っていないのにそんなふうに思うのは、一緒に帰らなかったその時間が私にとって大きな意味を為していることを示しているような気がする。