まぁいいや、気長に待とう。

私は、これとは比にならないくらい待たせちゃったんだから。


空の色が完全に濃紺に染まった頃、ようやくサッカー部のリュックを背負った生徒が門に現れた。

いざ対峙するとなるとドキッとして、足が竦む。そんな自分が嫌になる。


私の前を通り過ぎた一団の中に、彼の姿はなかった。どうやら、今のは2年生の集団だったみたい。


「…………」


息を吐いて、再び門に体重を預ける。


昨日の夜、色んなことを考えた。

私が何を伝えたいのか、どう伝えることが最善なのか。

沢山たくさん考えて、決意が揺るがないうちに向き合うことを決めた。

だから逃げちゃダメなんだ。誠心誠意伝えることが、私に出来る唯一のことだから。


しばらくして、見知った姿がこちらに近付いてくるのが見えた。

向こうも私に気付いたらしく、パッと右手が挙げられる。


「こんなとこで何してんの?」

「康介待ってんの」

「あぁ、うちのエースか」


私の前まで来て足を止めたのは南山で、彼は部室のほうを振り返って指さした。


「あいつももうすぐ来ると思うよ」