私が他の人を──リョータのことを、好きだったからなんだ。




リョータが好き。自覚すると、何ともむず痒い響きだった。

でも何の違和感もなくしっくりと馴染んでいるそれは、なんだかずっと前から付き合ってきた感情のようにも思えた。


そして、恋心を自覚した私にはどうしてもやらねばならないことが残っていた。




練習を終えて、門に体を凭せ掛ける。

使い古したボロボロのエナメルバッグは相も変わらずずっしりと重く、いつ来るかもわからない相手を待つ覚悟でいる私は早々に地面に下ろした。

西の空までもが群青に変わりつつある中で、私よりも後に部室を出たチームメイト達が前を通り過ぎていく。


「あれ。千鶴先輩、帰らないんですか?」

「うん、ちょっと人を待ってて」

「そうなんですか。お先に失礼しますね」

「うん、お疲れ。気を付けてね」


二言三言交わし、後輩達が学校を後にして帰路につくのを見送る。

私が部室の前を通った時はもう片付けの段階だったけど、もしかするとミーティングが長引いて遅いかもしれないなぁ……。