光希を独り占めしたいと思う、そんな強欲な女になってしまった』


『月並みな言葉だとは思うけど、光希といると世界が煌めいて見える。真っ暗になってしまっていた世界に色が舞い戻る。

時間を共有出来ることが何よりも幸せで、どんな困難も彼と一緒なら乗り越えられるんじゃないかと思う。

この気持ちに明確な理由を与えるとすれば、それは好きということなのかもしれない』


梨絵の感情の移り変わりがとても繊細に描かれていて、最後に自分のハンディキャップを受け入れて光希に想いを告げるシーンなんかは思わず感情移入してしまったほどだ。

感情移入して──私の中で何かがストンと落ちた。


なんだ? ……何が落ちた?

無事に結ばれた登場人物達の名前と一緒に、様々な情景が頭の中を駆け巡る。


梨絵が聴覚を失うシーン? ……違う。

光希がお菓子を届けるシーン? ここも違う。

もっと後の……梨絵が恋心を認めるシーン。


世界が、煌めいて色付く。そんな経験を、私もしたことがある。