それがわかってるから、きっと康介は明るく振る舞っていたんだと思う。

でも、心が追い付かなくて、自分の中で折り合いをつけられずにいるんじゃないかなぁ、って……。



私が考えても仕方のないことだって、頭ではちゃんとわかってるつもりなのに、イマイチ練習に身が入らない。

康介が知ったら、きっと怒るんだろうな。

「集中しろ」って。「俺のことなんか気にすんな」って。「見たい景色があるんだろ」って……。


「……千鶴先輩?」


遠慮がちな声に呼ばれて振り向くと、トモちゃんがすぐ傍に立っていて。

どうやら、何度か声をかけてくれていたらしかった。


「ご、ごめん。何?」


集中出来ていないことを見透かされるのが嫌で……ううん、そんなのもうバレているだろうけど、上辺だけでも繕っていたかった。

それがわかっているからか、トモちゃんは深く追求はせず、ストップウォッチを持った右手を軽く挙げた。