「こんな大学、実際に存在したんだねぇ……」

「バカ、今まで何だと思ってたのよ」


幻か何かだと、って言ったら呆れられそうだから言わない。


「こんなレベルの大学、私には無縁過ぎてさ」

「そうでもないんじゃない?」


え?

再び、真田が進路希望調査票を指す。さっきの大学が書かれた、その下。


「ここ。聞いたことあるでしょ」


真田の綺麗な字で綴られていたのは、これまた有名な大学だった。


「今のところ私の第二志望校なんだけど。登坂も知ってるよね、陸上強豪校だってこと」


もちろん知っている。インカレなど大きな大会の常連校だし、毎年のように選手が実業団入りを果たしている。

うちの部の歴代の先輩も、何人かは進学先として選んでいたはずだ。


「そこに何の関係が……」

「陸上の強い大学に行って、もっと高みを目指す道もあるってことよ」


真田の口角が不敵に上がる。

考えたことのなかった道を照らし出され、少し、どきりとした。

それを見抜いたのか、真田がプッと吹き出す。


「なんて、今言ってもしょうがないか。インハイで結果出さないことには難しい話だろうしねー」