康介相手に、こんなことを思う日が来るなんて……。


コンビニの前を通り過ぎ、康介がスタスタと先を歩き出す。

私はチキンを持ったまま、道の端を歩く彼の後を慌てて追った。


「食えよ、腹減ってんだろ?」

「え? あ……うん」


肩を並べた私を見下ろして、康介がいつもの調子で言う。

いつもの調子……。ううん、違う。いつもの調子に、見せかけているだけだ。

思い上がりなんかじゃないはず。今ならわかる。

康介は懸命に、必死に、私に気持ちを悟られまいとしていた頃と同じように振る舞っているだけ。


そのことに気付いて、胸の奥がきゅうっと痛む。

チキンを口元まで持ち上げたまま、視線は道路のアスファルトに落ちていた。


「……ちづ?」


そんな私を、康介が心配そうに覗き込む。


「おい、大丈夫か──って、危ねぇ!」


……え?

康介の緊迫したような声が鼓膜を震わせたと思ったら、次の瞬間腕を引かれ、大きな温もりが私を包んだ。

何が起こったのか理解することが出来なくて、ぱちぱちと何度も瞬きを繰り返す。