「お腹空いた……」


のそのそと起き出してリビングの扉を開けたけれど、そこには誰の姿もなかった。

しんと静まり返った空間に首を傾げていると、テーブルの上に置かれているメモと千円札が目に入る。


【急用が出来たので、お父さんと出掛けます。お金を置いていくので、お昼はどこかで買ってきてください】


嘘でしょ……!?

お腹と背中がくっついちゃうんじゃないかってくらい空腹を感じている私にとっては、何とも酷な内容だった。

一縷の望みをかけて冷蔵庫を開けるも、中に目ぼしい食材は見当たらない。

いつもは豆腐とか卵とか何かしらあるのに、今日に限って簡単に調理出来る類のものが何もないなんて。


「……仕方ない、買いに行くか」


マンションから一番近いコンビニまでは、徒歩5分ってところ。

適当にお弁当でも買ってこよう。

行くのが面倒だからって変に悪足掻きしても、却って空腹が加速するような気がするからやめた。