声の主は、同じ地区大会に挑む近くの公立高校のジャージを身に纏った女子生徒だった。2人組で、顔つきはまだ幼いから、多分1年生。

聞こえていると思ってなかったのか、私と視線が絡むなり、びくっと肩を強張らせた2人。


ゴメン、別に驚かせるつもりはなかったんだけど。

内心苦笑いを浮かべつつ、視線を輪の中に戻す。

私達に視線を向けているのがさっきの2人だけでないことは知っている。


うちは県内有数の陸上強豪校で、大会の時には多くの視線を集める。

私はもう当たり前になってしまったけど、1年生達はまだ慣れないみたいだ。


「緊張しないで、頑張ろうね」


肩の力を抜いて、落ち着いて。

タイムももちろん大事だけど、まずは走ることを楽しんで。

そわそわと落ち着かない様子を見せていた1年生にかけた言葉は、もしかしたら自分に向けてのものだったのかもしれない。




大会を終えたその日の夜、パジャマ姿の私はいつものように勉強机の前に腰を下ろしていた。