物足りなさを感じながら調整を行う間、意識は自然とサッカー部のほうに向いていた。

ボールを追って、グランドを駆け回る康介。寝てないくせして、なんであんなにパワフルなんだか。


「…………」


真剣な眼差しでサッカーをする姿はかっこいい、と思う。

女の子達が黄色い声を上げる理由が、今ならよくわかる。

こんなふうに少しずつ、康介を男として見ていけばいいのかな。


でもまずは、リョータに依存しているという現状から脱却するのが先だなぁ……。




帰り道は1人だった。ちゃんと断ったり、私の勝手で一緒に帰らないことはあったけど、今日みたいに康介からのコンタクトがないまま帰宅したのは初めてで、身勝手だとわかっていながらも何だか寂しかった。

私が先に帰ってしまった時、康介もこんな気持ちだったのかな。そんなことを考えて、またチクリと胸が痛んだ。


ローファーを脱いで、一旦は自室に直行しようとしたところを、思い留まる。

洗面所でしっかりと手洗いうがいを済ませてから、洗濯機の上に脱ぎっぱなしにしていた部屋着に着替え、リビングに向かった。