「“リョータ”もきっと、あんたを甘やかすつもりで優しい言葉を手紙に託したんじゃないと思うわよ」


声を荒げたいのに、荒げるだけの理由を見つけられないからもどかしい。

彼女の言葉はどこを切り取っても覆すことの出来ないくらい、正論なのだ。


「わかるけどね、ギリギリに追い込まれた時、差し出された優しさに寄り掛かってしまう気持ち」


滑稽なくらい表情をしわくちゃにしているであろう私の頭を、真田が優しく撫でる。


「今いる場所から、一歩だけ引いてみて。“リョータ”の言葉を、単なる言葉として受け止めてみて」

「単なる、言葉として……」

「そう。私はね、長谷に遠慮して彼との文通をやめる必要はないと思うのよ。“リョータ”との関係も大切にしなくちゃいけないだろうし」


長谷は望まないだろうけどね。と、彼女は私の髪に手を滑らせたまま、控えめに笑う。


「でもね、気付いて。私達は高校3年生。春になればここを卒業するんだよ」