リョータはいつも、私の全てを包み込むように優しくて、穏やかで。

だけど、その奥深くに確かな強さを感じさせる。そんな人。


「リョータの言葉に、私は何度も救われた。灰色だった世界を、リョータが彩ってくれた。リョータがいなかったら、今の私はなかったかもしれない」

「……きついことを言うようだけどさ」


低く前置いて、真田が真摯に私を見つめる。

その漆黒に、危うく吸い込まれそうになった。


「今の登坂は、“リョータ”に依存してるように見えるよ」


臆することなく放たれた文言に、右の口角だけが微かにひくつく。

しかし、そんなことはお構いなしの彼女は続けた。


「リョータが、リョータの、リョータに。……って、あんたはリョータ教の信者か」

「な……っ」

「“リョータ”を否定するんじゃないの、むしろ否定したいのはあんたのほう。自分1人で立つことの大切さを見失いかけてる」


平坦な声色で淡々と並べられていく言葉は、私の心に容赦なく突き刺さる。