そうやって秘めていてくれた感情なのに、こんな形で知られたくはなかったよね。ごめんね。


次々と押し寄せる後悔の念と比例するように、目の奥から涙が湧き出てくる。

噛み締めた歯の隙間から漏れる嗚咽を忌々しく思う私の肩に、真田の手が優しく乗せられた。

涙で濡れた顔を上げると、穏やかに微笑む真田と視線が絡む。


「何があったのか知らないけどさ、今度は私に踏み込ませてよ」


心地いい音色に鼓膜を震わせられ、私はもう、この両手に余るここ最近の出来事を抱えるのをやめた。




涙混じりだったけど、順を追って出来るだけ丁寧に話をした。


去年の冬、“リョータ”という謎の人物から手紙が届いたこと。

初めは不信に思ったけど康介の一件で彼の言葉に励まされたこと、返事を書いたこと。そこから、一風変わった文通が始まったこと。

リョータの影響で、敬遠していた読書にハマったこと。いつか、姫路名物のどろ焼きを食べてみたいと思っていること。

中学最後の大会で自己ベストを出したこと。100メートルを走り切った後見た景色が今でも忘れられないこと、その会場にリョータもいたこと。