「長谷があんたを好きなことくらい、とっくに気付いてたよ」

「……嘘、でしょ?」

「残念ながら本当。長谷ってば憎まれ口を叩くくせに、目はびっくりするくらい優しいんだもん」


言われて、記憶の糸を手繰り寄せる。

康介が私を見る目は、どんなだったろう?


いつもくだらないことで笑い合って、言い合って。二重の目が、弓なりを描いて細められることも呆れたように窄められることもあった。

昨日の氷のように冷ややかな視線の存在を知って、ようやく気付く。

康介の瞳の奥には常に、柔らかいおひさまのような温もりが宿されていたことに。


「私、最低だ……っ」


くしゃくしゃに笑う康介の姿を思い浮かべると、激しい後悔が胸を噛んだ。

透明な水滴が瞬きの拍子に弾き出され、体操服の袖を濡らす。


気付けなくてごめん。気付こうとしなくて、ごめん。

私があんな調子だったから、あんたも言えなかったんだよね。