言い表しようのない不快感を覚え、跳ねるように飛び起きた。

現実世界に意識が引き戻され、肩で息をしながら辺りを見回すと、ここは電車内などではなく薄いピンク色のカーテンで囲われたベッドの上だった。


「保健室……かな」


今し方まで自分が生きていた世界が幻であることに気付き安堵するとともに、夢の内容を思い出して全身の肌に粟を生じた。


……なんという夢を見てしまったんだろう、私は。

眉をきゅうっと顰めた時、ピンク色のカーテンが揺れた。


「あ、起きた？」


カーテンの向こうから姿を現したのは真田で、彼女の手にはミネラルウォーターのペットボトルがあった。

目を瞬かせて見上げると、彼女は緊張が緩んだような笑みを見せる。


「覚えてない？　体育の時間、バスケットボールが頭に直撃したこと」

「あ……」


言われて、ようやく記憶が舞い戻る。

そうだ。あの時、女子の試合で使っていたボールが私の頭にクリティカルヒットしたんだった。