集まるサッカー部員を掻き分けて、その人物に近寄る。

輪の中にいたのは──


「康介っ……!」


頭から血を流し、その場に倒れ込む康介。

表情は苦痛に歪んでいる。


「小林も大丈夫か……!?」


他の名前がどこからか聞こえ、視線を向けると、3年の小林先輩も頭を抑えてうずくまっていた。

どうやら、プレー中に頭をぶつけたようだけど……。


「せ、先生呼んでこい……!」

「止血用のタオルも!」


緊迫した声が飛び交う。

幼なじみの痛々しい姿を前に、私はその場に立ち尽くすことしかできなかった。




「そんな顔すんなって」


康介の呆れたような、それでいて困ったような声が部屋に響く。

その物言いは、いつものイジワルなのとは違くて、ちょっと気を抜いたら涙が転げ落ちてしまう気がした。


「脳の検査でも異常なかったし、俺こんなに元気だし! な?」


若い看護師さんに頭に包帯を巻かれながら、元気アピールをする康介。