彼女の目に溜まった涙に、群青色の世界が映り込んでいる。


「好きって、言わなかったよ」


赤みがかった深い青が、堪えかねたように白い肌をぽろぽろと滑り落ちていく。

初めて至近距離で見るそれは、冷ややかなベールに包まれて、とても綺麗に見えた。


「言えなかったんじゃないの。言ったら、サトタツはきっと笑顔で受け止めてくれたと思うけど、もしかしたら一点の曇りもなくケッコンできなくなるんじゃないかと思ったの。それはサトタツにとってよくないことだって思ったの」

「……うん」

「でもそれ以上にね、私の告白を受けたサトタツが、一点の曇りもなくケッコンするのが我慢できなかった。片想いのくせして、我ながら図々しいと思うよ」


そんなことない。そんなこと、ないよ。

鼻がツンとしてうまく声が出なかったから、代わりに何度も首を振った。

そんな私に、真田が目を細める。


「サトタツね、一人で数学準備室にいたの。私と同じ夢を抱いて、叶えて、そこにいたの」