そこに確かな色が宿ったのを認めた瞬間、彼女は勢いよく立ち上がった。

追って顔を上げるけど、西日に照らされた彼女の表情は見えない。


「ありがと、登坂。私、行ってくる……!」

「……うん。ここで待ってるよ」


私の返答を聞いた真田は、陸上部顔負けのスピードで駆け出した。


さっきまでは曇天が広がってたのにな。

このタイミングで晴れるなんて、神様からのプレゼントなんじゃないかって思っちゃうよ。ガラじゃないかもしれないけどさ。


「頑張れ、真田」


頑張れ。頑張れ、頑張れ。

私にはもう祈ることしかできないから、せめて沢山祈るよ。


彼女の恋の終着駅に、どうか悔いの姿がありませんように。




悴む手に息を吹きかけながら、真田が帰ってくるのを待った。

東の空が深みを帯びて、次第に様相を変えていく。


その様子を眺めているうちに、背後で物音がした。

弾かれたように立ち上がって振り返ると、鼻を真っ赤にした真田と視線が絡む。


「さな──」

「登坂、私ね」