真田が手にしていたのは、サトタツに託された数IIIのプリントの束だった。

記憶よりもずっとボロボロになっていて、所々破れてしまっているけれど。


「私さ、初めは数学なんて大っ嫌いだったんだ」

「えっ、嘘でしょ!?」

「嘘じゃないよ。マジ中のマジ。他の教科はできるのに、数学だけはどうしても苦手で、どうにかして高等学校のカリキュラムからなくならないかなって、ずっと思ってた」


し、知らなかった……。

私が出会った真田は、みんなが解けないような問題も解いてしまう真田だった。

まさか、私と似たようなことを考えていた時代があったなんて。


「でも、そんなこと現代の日本では出来ないでしょ? いくらバカなこと考えて現実逃避しようが、結局はどうにかして数学っていう敵を退治しなくちゃいけないわけで。

1年生の時、教科担当の先生を頼ったりしてたんだけど……その先生が忙しくて、私に対応できなかったことがあって」


その時にね、と真田は言葉を続ける。