そして、


「ごめん」


口にしようとした文言が、そっくりそのまま隣から飛んできた。思わず、目を剥いてしまう。

首を捻ると、階段の数段下に視線を落として眉根を寄せている真田の姿が目に飛び込んできた。


予想外のことに何にも言えないでいる私に、真田が畳み掛ける。


「私、ずっと上の空で登坂と接してた。八つ当たりして、酷いこと言った。向き合うのが怖くて、逃げてばっかりだった。ずっと、最低な態度を取ってたと思う。本当に、ごめんなさい」


真田の表情はもう見えなかった。

膝におでこがついてるんじゃないかってくらい、深く頭を下げたから。

はっとして、慌てて声帯を機能させる。


「まっ、待ってよ! なんで真田が謝ってんの! 謝らなきゃいけないのは私のほうなのに!」


真田の華奢な肩に手を添え、彼女の顔を無理矢理上げさせた。

この状況で真田に頭を下げられているなんて、あまりにいたたまれなくて我慢できなかった。