ぽつぽつと登校してくるクラスメート達に、今日は珍しく寝てないんだねーなんて声を掛けられながら。


朝一番に話をしたかった私の気持ちなんてつゆ知らず、真田はチャイムが鳴るギリギリの時間に教室に姿を見せた。

鞄はいつもの部活のキャリーじゃなく、学校指定のものだ。部活、今日はオフなのかな。


「……よし」


小さく意気込んで、席についている真田の背中に近寄る。


「真田」


周りの喧騒に掻き消されてしまわないように、お腹に力を入れて彼女の名前を声に乗せた。

それでも、さほど大きな声じゃなかった。これで普通の声量と同じくらいなんだから、いつも通りに呼んでいたらどれだけ小さな声だったんだろう。


彼女はゆっくりと体を翻した。慎重に、多分、どんな顔をしたらいいのかわからない様子で。

久しぶりに目が合った。真田の瞳の中に、いつもの力強さは見て取れない。