靴箱ポストが手紙を届けてくれたのは、私が投函して数日が経ってから、2月に差し掛かった頃だった。

そして翌日の放課後には、部活前に靴箱を覗き込んだ私のローファーの上に、相変わらずなんの変哲もない封筒が乗せられていた。


心臓が大きく波打つのを感じながらそれを手に取り、人気の少ない廊下の隅に移動する。

肩にかけていたエナメルバッグを床に置いてから、ひとつ深呼吸をして、逸る気持ちを感じつつ封を開けた。




【登坂 千鶴さんへ


こんにちは。

何となく、何かで悩んでるのかなって思ってました。最近の登坂さんの走りが、元気ないように見えたから。

って、またストーカーじみたこと言っちゃった(笑)

ストーカーしてるつもりはないけれど、俺は相変わらず、グランドに見える君の走る姿に力を貰っています(ストーカーは無自覚っていうツッコミは勘弁してください)。


俺にも、登坂さんの選択が正しかったかどうかはわからない。

俺がその友達の立場だったら、同じように反駁してしまうかもしれない。俺の口からは何も言ってないのにって。

でも、登坂さんは言うことを選んだんだよね。