街灯の影が落ちるアスファルトから視線を上げないまま答えると、右隣から「そっか」と短い返答が返ってくる。


康介なりの気遣いだってことはわかってる。

だけどごめん。いっぱい食べて楽しくお喋りとか……そんな気分じゃないんだ。


昇降口に差し掛かり、自分の靴箱に向かうべく一旦康介と別れる。

一番右にある靴箱の、3段目。そこにしまわれている踵が擦り減ったローファーを取り出そうとその扉を開けて、私は動きを止めた。


使い慣れた靴箱。いつも通りの、古い靴箱。

だけどもう、これはただの靴箱なんかじゃない。


私とリョータを繋ぐ、唯一の糸。


「……っ」


そうだ……私にはリョータがいるじゃんか。

私と真田の今の関係を知っている康介や南山には、うまく相談できなかった。

だけど、何も知らないリョータになら。