階段に差し掛かったところで、自分にとっては少々痛い話題を取り上げることにした。


「寒くていつもは中々布団から出られないんだけど、今日は一瞬で出れたよ。起きたらとんでもない時間だったからさぁ」


今朝の出来事を、自虐的に話す。

そしたら真田は、「何馬鹿なこと言ってんの」「ちゃんとしなさいよ」って、いつもの調子で怒ってくれる。……はずだったのに。


「そうなんだ」


生返事も甚だしい。いつもの真田からは考えられない。心ここに在らず、だ。

その返答が鼓膜を震わせた瞬間、私は無意識のうちに歩みを止めた。


「登坂?」

「……らしくない」

「え?」

「最近の真田……真田らしくないよ」


数段下にいる真田を見下ろし、必死に言葉を振り絞る。


私が真田にしてあげられることを夜明けを迎えるまでいっぱい考えて探したけれど、見つけられなかった。