「忘れた」


がっくりと肩を落とした真田は、どうやらお弁当を家に忘れてきてしまったらしい。


「うわー、それ凹むやつ。どうする、食堂行く?」

「か、売店で買う。悪いんだけど、付き合ってもらっていい?」

「もちろん」


ランチバッグを提げて、財布をブレザーのポケットに突っ込んだ真田と教室を出る。

瞬間、ひやりとした空気がスカートの中に入り込んだ。


「やっぱり寒いね。タイツ履いてても結構こたえるー」

「そうだね」


みんな教室や食堂に移動した後なのか、廊下に人影は見受けられない。

春や夏、秋なんかは平気で教室から出られるけど、この季節は極力出歩きたくないんだろうなぁ。実際私も、トイレに行くのさえ億劫になるし。