比較的静かにはなったものの、教室の空気はもはや自習どころではない。

みんなサトタツのことで頭がいっぱいで、真田が出て行ったことを特別気に留める子はいないようだ。

けど……。


「……っすみません、朝食べた目玉焼きのせいでお腹が頭痛なので、私もトイレ行ってきます!」

「な、何言ってるんだ登坂……って、おい!」


サトタツから預かったプリントは真田の机の上に置かれたまま。

先生の声を背中で聞きながら、教室を飛び出した。

スタートダッシュは我ながら完璧。だてに毎日走り込んでないもん、先生にだって捕まんないよ。


ひたすら足を前に出して、友人の姿を探す。

案の定、トイレにはいなかった。階段の踊り場にも、渡り廊下にも。

真冬の廊下は手足が凍りつくほど寒いけど、今感じている無機質な冷たさの理由はそれとは他にある気がした。


「どこにいるの……!」