「お前、何言ってんだよ?!」

抗議の声をあげる凱。

「うんっ!絶対、蓮より上手いって自信あるから!歌わせてよ。」

蓮をバカにできるのは、今のうちだ。

蓮より上手いわけねぇだろ。

「曲は?」

「私、オリジナルで歌えるの一曲だけなの。“宝物”でよろしく~。」

「はっ?」

それは蓮のことを思って、オレが書いた曲だ。

蓮の為の曲を、なんで他のヤツに歌わせないといけないんだよ。

「違う曲で。」

「イヤ!じゃあ、またスタジオ遊びに来ちゃおーっと。」

……殺す。

これ以上顔合わせたら、オレブチキレる自信しかない。

祢音も凱も静かにキレてる。

「…わかった。」

今、考えると蓮が悲しむってわかってんのにな。

この曲ができて聴かせたときの、嬉しそうに泣き笑いした蓮を二度と見れなくなるなんて…この時のオレは思いもせず、ただこの女に会いたくない一心だったんだ。

こうして、オレは自分で本当の宝物を“宝物”で汚してしまった。

もう、この曲を蓮が心から好きだといってくれる日は、二度と来なくなった。