『ありがとう。サヨウナラ。』

棒読みで返事しながら、そこから立ち去ろうとする私の腕を強引に引っ張る加賀見虹。

ハッキリ言って友達でもないのに、触られたくない。

「冷たい!せめて友達になってよ!まずそこから始めようよ。」

何も始まらんわ。

「離せ。」

いつもより低い桐の声。

「お前が関わって良いことはないだろ。次に遊ばれるのは蓮かって、周りが思うのも迷惑だ。」

うんうん、そうそう。

桐の言う通りだよ。

「遊びじゃねぇし!本気だ!」

「バカか。他に女たくさんいるくせに、何が本気だよ。そんな女と蓮を一緒にすんなよ。」

「………。」

ぐうの音もでないとはこの事ね。

悔しそうな加賀見虹の顔。

冷ややかな桐の顔。

それを交互に見ながら、私は加賀見虹に向かって一言だけ言ってその場を後にする。

『私があんたみたいな軽い男を相手にすることは、一生ないから。』

キツいかもしれないけど、ハッキリしとくにこした事はない。

これ以上絡まれるのも面倒だしね。

ここまで言ったんだから、もう関わってくることはないだろう。

私はそう思っていた。