気軽に女の子と付き合う。

それがオレのモットーだった。

しかし中学に入ると、かなり積極的な先輩があらわれはじめた。

部活なんて、汗臭いことやるのが嫌なオレは、放課後の暇を女子でうめていた。

小学校のころは、集団で家でゲームぐらいでかわいいものだった。

それが、中学生になった途端、家で遊ぶ意味が変わってきた。

ゲームをしていても、話していても、突然見つめられる瞬間がくる。

「何?」

と聞くと、今まで見たこともない表情を浮かべ、

「ゲーム以外のこともしない?」

と俺を誘惑してくる。

女の子は、やわらかくて気持ちいいから 好きなんだけど、積極的すぎるのは、引く。

オレんちで、ベタベタしてくるのも、キスぐらいならまだいい。でも、ぬぎ出されても困る。

興味がないわけではないけど、誰もいないからって、リビングではどうだろう。

オレの部屋は弟と同室だし。

しかも、そういう時に限って、母さんが帰ってくる。

別に面と向かって怒られるわけじゃないが、毎回、大きなため息をつく。

オレの連れてきた女の子が、気に入らないのだろう。

その度に、オレは結莉を思い出していた。

きっと母さんの理想は、結莉なのだろう。

頭が良くて、礼儀正しい、清楚で美人。

頭が悪そうで、いつもスナック菓子と炭酸を飲みながら、スカートなのにあぐらをかいて、俺を誘惑する。

この女は母さんの理想にはほど遠い。

毎回違う女の子を連れてくるオレにも、愛想が尽きている様子だった。

最初の基準が結莉なら、それを越えるのは難しい。

オレは会っていないけど、母さんはたまに、結莉の家に行くから、どうしても比べてしまうのだろう。

昔は嫁候補だっただけに。

母さんの、残念そうな目差しと、ため息を聞くと、なぜか、その子とそれ以上進めなくなる。

ダメだと言われたようで、やる気がおきない。

だから、オレんちに女の子を連れ込むのはやめた。

母さんの望むような女の子とも、付き合ってみたが、しばらくすると、家に呼ばれ、おとなしいはずの彼女が、次々と服を脱ぎ出し、オレにせまってきた。
絶妙なタイミングでお父さんが帰宅し、正座で一時間説教された。

オレは何もやっていないのに。

中3の終わりごろだった。

結局、その子とも気まずくなって、高校では、ひとりに決めないことを条件に、女の子と楽しく遊んでいた。

しかし、7月ごろ、急にオレの取り巻きが増えた。
よくよく話を聞いてみると、サッカー部の氷上ファンから流れてきたらしい。

イケメンで背が高く、サッカーも上手な氷上君は、その容姿のわりに女子とあまり話さず、そこがまたクール。
彼女を作らない主義で、どんな子からの告白も断る。
サッカー一筋だったのが、超モテポイントだったのに、難攻不落の氷上君を落とした女がいるらしい。

しかも、氷上君が小学生のころからずっと好きで、片想いしていたらしい。

という情報を、元氷上ファンいただいた。

で、オレに乗り換えるのもどうかと思うが。

どんなヤツかと見に行って見ると、オレと真逆タイプのイケメンだった。

なんとなく、面白くなかったが、それ以上の感覚もなかった。

氷上の彼女が、結莉と知るまでは。