買い物から帰ってきた氷上のお母さんが、私達の前に座って、小さな封筒を差し出した。

「結莉ちゃん。いつもバカな息子達をありがとう。これ二人で行ってきて‼ 生協で買っといた!」

封をあけてみると、USJのチケットが2枚入っていた。

「えっ!いいんですか?私の分まで…」

「いいのいいの。
本当に成績あがってて、もっとお礼したいくらいなの。
行く日に涼におこづかい渡すから、
結莉ちゃん好きなもの買ってね。」

「ありがとうございます。チケットだけで十分です」

USJなんていつ以来だろう。

小3の時以来行ってない。

家への帰り道、歩きながら聞いてみた。

「氷上はよく行くの?USJ。」

「行かないよ。土日はサッカーばっかりだし。
氷上に戻ってるし。」

「あ…」

長年の癖が…

「結莉さ…さっき俺に見とれてたって言ってたよな」

その話するの?恥ずかしい…

「うん…」

「どこに見とれてたの?」

聞くんだ…

「………濡れた髪…初めて見て…改めてかっこいいな…って思って…ちょっと触れたくなっちゃって…」

恥ずかしい…何を言ってるんだ私。

すると氷上が頭を私の前に出した。

「もう乾いちゃったけど、よかったらどうぞ。」

心臓がいくつあっても足りない。

ドキドキさせるのが上手だ。

そっと氷上の髪を触った。

耳に少しかかった髪がかわいい。

柔らかい髪が気持ちいい。

両手で頬のあたりを触れた時

澄んだ瞳に吸い込まれた。

お互いに少し近寄って

唇が触れた。

「目をみると何も考えられなくなるんだよ。」

今ならわかる。私もそう。

お互いにそう感じているなら、それでいいんだ。


「氷上……じゃなくて…涼は、私のどこに見とれてたの?」

「えっ?! えーと。ひとつは言えない。
もうひとつは、耳の後ろにホクロがあるなーと思って見てた。」

「言えないってどういうこと!
私、恥ずかしいのに言ったのにー‼」

「言ったらドン引きされるから、言わない。」

「ドン引きしないから教えて‼」

「絶対、いわなーーい。」

住宅街を笑いながら歩いた。

モヤモヤも晴れた。

綺麗な三日月が出ていた。