勢いで繋いだ手をそのままに、家の方向に歩いていた。

さっきの男子に握られた手は、あんなに気持ち悪かったのに、氷上に握られた手は、あたたかくてドキドキする。

もう月がくっきりみえるほど暗くなっていた。

見慣れた近所の町並みが、いつもと違って見える。

小学生のころよく遊んだ公園が見えてきた。

「ちょっと寄ってく?」

氷上が私と同じ考えだったことに、またドキドキした。

私も もう少し話したいと思っていた。

このまま帰ったら、まるで春の夜の夢のように、この事実がなくなってしまいそうだった。

「うん。私も話したい。」

小学生ころのような軽口はたたけない。

緊張しすぎて、変なしゃべり方になっていないか心配だった。

昔よく友達と駄菓子を食べたベンチに二人で座った。

「久々にこの公園きたかも」

「私も」

ほんの数十分前は絶望的な気持ちだったのに、

今は体中からうれしさとドキドキがあふれる。

「本当に俺でいい?勢いで告白しちゃったけど、後悔してない?」

氷上の顔…ずっと見ていたい。

「告白なんて‥‥氷上にとっては勢いでも、私はうれしいよ。」

「勢いって、そういう意味でなくて、何て言うか‥‥俺じゃなくても誰でもいいっていうわけじゃないのかなーとか‥‥」

何で私じゃなくて氷上が支離滅裂になっているのかわからなかった。
でも、今さら‥‥って言われても嫌だ。
氷上の目を見て

「‘氷上が’いいんだよ。」

と言った。二人で笑って赤くなってうつむいた。

「でも、松田に感謝だな」

「里桜になんで?」

「だって、あいつが無茶な合コンセッティングしてくれたおかげで、深瀬から連絡きたし。」

「あっ!里桜絶対怒ってる。勝手に帰ったこと連絡しないと…」


スマホを出すと里桜から、鬼のような着信が入っていた。

「彼氏できたよ。って送っといたら?」

笑いながら氷上が言った。

「袋叩きにされるよ‼」

氷上が小学生のようなイタズラな表情で笑った。