涼の高校初めての試合がある日の朝だった。

私も母親会で手伝いと応援に行く予定だったので、弁当を作っていた。

用意を済ませた涼が、朝ごはんを食べながら、

「母さん、今日来るだろ?紹介したい人いるから、試合終わったら待ってて。」

と、唐突に言われた。
洗っていたコップを落としそうになった。

「了解」

クールに返事はしてみたが、内心は

聞きたい聞きたい聞きたーーーーい。

誰なの?結莉ちゃんなの?違うの?

うまくいったの?どうやって?

でも、自分から紹介するって言ってるんだ。

試合終了まで待とうじゃないか。

私よりだいぶ背が大きくなった息子が、玄関を出ていく。

少し照れた顔も、

何かを考える悩ましい顔も、

もう私に向けられることはないだろう。

でも、涼の幸せそうな顔を、

楽しそうな笑顔を

見れるだけで私は幸せ。


紹介される〝誰か〟が〝深瀬結莉〟なら最高にいいのに。