結局、涼は、この後 行動を起こせないでいた。

中学に入ると、何かあったらしく、反抗期とも重なって 何も親には話さない日が続いた。

態度も荒れていた。

それでも、サッカーと勉強に打ち込んでいた。

何かから目をそらすように。

でも母にはわかる。

涼はまだ〝深瀬〟が大好きなこと。

写真は机の中に大切にしまってあるし、

あの日結莉ちゃんが使ったタオルは、涼の部屋に置いてある。

全然隠しきれていない。

あんなに嫌いだった勉強に打ち込むのも、結莉ちゃんの影響だろう。

たまにある運動会などの行事で、中学に行くと、涼は無理に男子の輪の中にいて、近くに結莉ちゃんがいても、無視…というより 見ないようにしていた。

結莉ちゃんもまた、涼に話しかけたりしない。

ただ 涼は、結莉ちゃんが遠くにいると、無意識に目で追いかけていた。

切ないほどに。

でも、涼のまわりは、群れ系の女子が入れ替わり立ち替わり引っ付いていて、大変感じが悪かった。


何となく、うまくいかない理由は察したが、ここから先は自分で頑張るしかない。

自分で伝えないなら、手には入らない。

涼はまだピッチにもあがっていない。

いつまでベンチに座っているんだ。


全てを後回しにしたツケがまわってきたのだ。



だから卒業式の前日、あの子の制服のポケットから自分の連絡先を書いた紙を見つけた時、

今さら連絡先?
とも思ったが、一歩踏み出す勇気を得たのだと、うれしく思った。


卒業式の後、毎日のようにスマホを見つめていた。

食事の時も、トイレに行く時すらスマホを気にしていた。

音がなる度、私まで気になった。

連絡先は渡したけど、告白出来なくて、連絡待ちなのがバレバレだった。