6年も結莉ちゃんと同じクラスで上機嫌だったのに、参観日があるころには、少し 気落ちしていた。

フラれたか?

と思ったが、涼にそんな 行動力があるはずもない。

いつも やらなきゃいけないこと を後回しにする性格。

宿題も 基礎トレも 片付けも。


どんな風になっているのかと、授業参観を見ると、なんだか ややこしそうな女子がいっぱいだった。

何人かの女子が涼の回りを取り囲んでいる。

きゃっきゃきゃっきゃと、
何かを聞いている。

それをうっとおしそうにしながらも、
振り払えないでいる。

取り巻きの女の子の一人が、チラッと私の方を見て、涼に話しかけ、笑っている。

すると、女の子達が私の所まで来て、

「あのぉ。氷上君のお母さんですかぁ。
私達、氷上君のおうちに遊びに行きたいんですけど、いいですかぁ。」

と、猫なで声で聞いてきた。
クスクス笑いながら。

内心、絶対イヤ!と思いながらも、親御さん達の手前、

「涼が呼びたいなら、かまわないわよ。」

とひきつった笑顔で答えた。

何をやってるんだ息子よ。

ママはそんな群れ系女子、イヤだからね!

「氷上くーん。お母さんいいって言ってるよー。」

言ってない‼ 断れ!涼!

念を送っていると、何とか断ったようではあった。

しかし、これは感じが悪い。

結莉ちゃんはどうしているのかと探すと、

隣の賢そうな男の子と、何やら勉強している。

涼の回りの騒ぎなど、気にしてない という感じに。

その間にも、涼は、チラチラ結莉ちゃんの方に視線を配る。

気になるなら、まずその回りの女子をどかしなさい!

息子ながらに腹が立った。

ほんの数ヵ月前は、私のナイスアシストもあって、あとちょっとでゴールが決めれそうだったのに、何をやってるんだ!

見た目に寄ってきた女子に うつつをぬかしていると、さっと横から奪われるぞー。

あの隣のメガネの子だって、絶対結莉ちゃんが好きだろう。

一番後ろの席だったので、少し近づいてみた。

すると、高そうな服と鞄に包まれてた女性が、結莉ちゃんとメガネ君を見つめている。

どちらの母親かはすぐにわかった。

メガネ君の方だ。

授業が始まる直前、

「しゅう君、ちゃんと前を向きなさい。」

と、小声で注意した。

小6の男子に、そんなこと言う必要はない。

少し結莉ちゃんに嫉妬してるようにも見えた。

そういえば、噂で聞いたことがある。

医者の息子がいて、賢いらしいけど、親も子供も付き合いにくい…系の噂。

もしかしてこの親子かしら。

もしそうなら、そんな男の子とも違和感無く接している結莉ちゃんがすごい。

このお母さんちょっと苦手かも…と思った自分が恥ずかしい。

ますます、ぐずぐずしている涼にイライラした。