「もう帰らないとまずいよね?」

「うん。」

何か喋りたいのに、何を話していいのかわからない。

このままじゃキスが嫌だったと思われるかも。

びっくりしたけど、イヤじゃない。

ただ初めてで…まだドキドキしてる。

どうやって伝えれば…

駅への長いスロープにさしかかった時、私から氷上の手を握った。

ぎゅっと。


これが精一杯。


どんな顔してるかな?と思って見たら、

真っ赤な顔して、笑ってた。

それを見たら私まで赤くなった。


帰りのモノレールは 閑散としていた。

座席に手を繋いだまま座った。

氷上が

「もうすぐ試合あってさ、あんまり会えないかも…なんだ。俺今度、試合スタメンでさ。」

「えっ!すごい‼まだ1年なのに?」

「うん。3年はでない試合だから。で、けっこう近くであるんだけど、見に来てくれない?」

「えっ!いいの?」

「うん。見に来てほしい。次、いつ会えるかわからないのは嫌だから…」

「うん…。」

「でも、たぶん当日はほとんど近くにいけないし、友達誘って来てくれてもいいよ!」

「わかった!学校の友達に聞いてみる。」

氷上がサッカーするところ、ちゃんと見たことなかった。すごく楽しみ。

他の皆がいるところによんでくれるのも、
「彼女」って認められてる気がしてうれしい。

次の約束があるのが、こんなにうれしいなんて。



家に帰ると、キスのことを何度も思いだし、全然眠れなかった。

会うたびに二人の距離が縮まる。

言葉だけでは伝えられないことも、触れ合うことで伝わる。

触れ合う…ってなんかいやらしい?
でも、付き合っていくと、自然にそうなるんだよね。

氷上のキスは、何も考えられない程、すごく気持ち良かった。

あぁぁぁぁ。なんか熱い‼

もう氷上が恋しくなってる。
会いたくなってる。
またキスしたいと思ってる。

自分にびっくりだ。

恋愛初心者の私の心のスイッチをそっと押された。

だめだ…何も考えられない。

氷上のこと以外。