名簿順に並ばされた席順では、僕と深瀬の席は遠かった。

深瀬の前は、サッカーがうまい女子No.1人気の氷上だ。

あの氷上がうれしそうに深瀬と話している。

僕はイライラした。

所詮深瀬も、大多数の女子と同じで、氷上のようなスポーツしかできない明るい男子が好きなのか。

綺麗で頭がいいんだ。

性格は最悪だろう。

きっと氷上の前では笑っているが、僕なんて虫けらのように扱うのだろう。

裏表があるんだ。

他の女子達のように…。

さっきまでの高揚感はなくなり、イライラと憂鬱な気持ちが心を覆った。

短めの自己紹介が終わり、下校となった。

今日も塾だ。早く帰って塾の宿題をしなければ…

そう思ってドアから出ようと思った瞬間、深瀬と目があった。

「周防君って、あの周防修治君?」

と深瀬が話しかけてきたのだ。

深瀬は続けた。

「さっき自己紹介きいてたら、知ってる名前の人がいるなーと思って!塾、一緒だよね?」

僕は平静を装いながら

「そ…そうだけど。」

緊張しすぎて言葉が出てこない僕と対称的に深瀬は続けた。

「私、一年くらい前に入ったんだけど、いっつも名前あるでしょ周防君。だから気になってたんだ。私は深瀬結莉。よろしくね。」

気になってたのは僕だけじゃなかった。

まだわからないが、深瀬は差別的な馬鹿な人間じゃないかもしれない。

僕のこと気にかけ、話しかけてくれた。

その事実がとても嬉しく、帰り道の足取りは軽かった。