もう、暗くなっていたので、とりあえず深瀬の家の方向に歩き出した。

さっき、全力で走った道を、今はわざとゆっくり歩いている。

しかも隣には深瀬。信じられない奇跡だ。

嬉しさとドキドキの反面、不安もあった。

このまま帰って大丈夫か?

深瀬が冷静になって、やっぱりやめとこう。

とか思ったらどうしよう。

ぬか喜びした分、絶望感はハンパない。


ちょうど前方に昔よく遊んだ公園が見えた。

もう少し深瀬と話したい。

「ちょっと寄ってく?」

「うん。」

小さくうなずく深瀬が可愛すぎる。

本当に俺でいいのか深瀬。

明日になって、やっぱり嫌…とか立ち直れない。

深瀬に対してとことん小心者な俺は、


「本当に俺でいい?勢いで告白しちゃったけど、後悔してない?」

こんな言葉しかでない。

自分でも情けない。

カッコ悪りぃ。。

後悔してる…って言われたらどうすんだ俺。

すると、深瀬が耳に髪をかけながら、俺の目を見た。

あまりの可愛さに、倒れるかと思った。

「〝氷上が〟いいんだよ。」

本当に?嘘でもうれしい。小悪魔か?小悪魔なのか?

あんなに今まで誰からの気持ちも受け取らなかった深瀬が、俺と付き合ってもいいって思ってくれた。

そう思っていいんだな深瀬。

俺はバカだから、言葉の裏なんてよめないぞ!



今日は人生最良の日だ。

体も心もフワフワしたり

ジーンとしたり

ジリジリしたり。

「でも松田に感謝だな」

「里桜に?なんで?」

「だってアイツが無茶な合コンセッティングしたから、深瀬から連絡きたし。」

本当にそうだ。

深瀬を危険な目に合わせたのはムカつくが、

俺にチャンスをくれたのは松田でもある。

「あっ、里桜絶対怒ってる‼」

「彼氏できたよって連絡しとけば?」

彼氏…とか言っちゃったけど、

不快に思ってないかな?

俺、調子に乗りすぎかな。

でも5年越しの恋が実を結んだんだ。

今日くらい調子に乗りたい。

「袋叩きにされるよ!」

ちょっと面白い深瀬に笑った。