「えっ…氷上こそ彼女いるんじゃないの?
私でいいの?」

綺麗な瞳をまんまるくして固まっている。

私でいいの?って言った?

深瀬の意図はわからないが、ここは攻めるしかない。

「〝深瀬〟がいいんだよ。
普通何も思ってない相手に連絡先渡さないだろ?
それに松田が紹介するやつより俺の方がマシだろ?」


彼女なんていたことない。

好きな子はずっといた。

5年以上の片思いなめんなよ。

深瀬以上に好きになれる子なんていない。

この重すぎる思い、もっと伝えたい。

謝りたいこともいっぱいある。

今しかない。

ずっと好きだって言うんだ。

言いかけた瞬間、深瀬の言葉が聞こえた。

「よろしくお願いします。」

少しはにかんだ顔で俺を見ている。

よろしくお願いします…って言った?

俺と付き合うってこと?

しばらく思考がフリーズした。

どういう意味?

今から深瀬が俺の彼女?

その場で飛び上がりたいほどうれしい。

本当に?本当に?本当に?

とりあえずの彼氏でもなんでもいい。

こんなこと ありえるのか?

何が起こったんだ?

気まぐれでも何でもいい。

深瀬の視界に入れるなら。

彼女の世界に入れるのなら。