深瀬の連絡先を見ながら、思い出を振り返り、

自分の情けなさに腹が立った。

そんなに好きで 忘れることもできないなら、

今、電話番号を押して、深瀬に思いを伝えればいい。

もう、学校も違うのだから、ただ見ることさえもできない。

もう二度と会えないかもしれない。

このまま思うだけでは、俺はどこにも進めない。

せめて、思いだけでも伝えよう。

こんなに こんなに 深瀬のことが好きなのだから。

そう思ってベットから起き上がった瞬間

携帯が鳴り響いた。

びっくりして画面を見ると、


深瀬結莉


俺、今かけた?

心の準備ができていないのに。

いや着信だ。深瀬から?

そんなことってあるのか?

プチパニックになりながら、急いでスワイプした。

「深瀬?どうした?」

「えっと…今ね ちょっと困ってて…えっと」

久し振りに聞く深瀬の声は、ひどく動揺していた。

頭脳明晰な深瀬の支離滅裂な話し方。

不安が募った。

「今どこ?どうした?」

「駅前のカラオケ…のトイレ…出れなくて」

カラオケ…嫌な予感がした。

深瀬が行きそうな場所ではない。

「大丈夫?誰といるの?」

「えっと…里桜達とカラオケに来たら、知らない男子もいて…なんかトイレの前で待たれてて…
手も触られて 気持ち悪くて…」

プチンと何かがキレた。

知らない男とカラオケ?

手を触られた?

なんでそんなとこにいる?

トイレから出たら何されるかわからない。

「駅前って豊中駅?Jカラ?今すぐ行くから出ずに待ってて!」

スマホを握りしめ、急いで部屋を飛び出し、走り出した。

ぐちゃぐちゃ考えていたことは忘れていた。

一刻も早く深瀬のところへ。